理想の職場環境を再現する

やりたいことは「楽しかった職場」の再現

書籍「ティール組織」を読んで初めてじぶんが今まで感じていた周囲への違和感が、「間違いでなかった」、「自分ひとりだけの感覚でなかった」と多いに勇気付けられました。

自分の考えに確信が持てたことはもちろんですが、今まで人に説明しずらかった、私が求めていたそのものずばりの表現が随所にあったからです。例えば、

「目標を達成すれば幸せになれると未来を信じて、今に耐えて未来に生きている。」

「高尚なミッション・ステートメントが絵にかいた餅としか思えない」

「良い組織は人を育てる。人々をその気にさせて、実力以上の能力を引き出す」

「直観は論理的思考と同じく、訓練によって鍛えることのできる筋肉だ」

「矛盾しているもの同士を合理的につなげる能力を得ることが認知上の突破口」

「エゴと合理性があまりにも強調される一方で、精神性と感情が無視されている」

それぞれの表現は今までも言われてきたことかもしれません。ただそれらがまとまり、1つの方向性を持ち、ティール組織の必然性に向かって説明されていて完成度が高い文献です。

いつのまにか職場で人と話すことが楽しくなくなった

2010年頃から職場の空気が変わりました。雑談をする分には特に問題なくても、いざ仕事の話をすると、違和感を感じるようになり、いつの間にか職場の雰囲気が楽しくなくなりました。

俯瞰的な視野で見ることが無くなり、前向きな提案もありません。基本的に仕事は辛いだけなのです。仕事中は、与えられた仕事を早く済ますことに集中し、それ以外の感情を殺して過ごす。

仕事が終われば、初めて自分の感情をONし息抜きをする。この辛い日々の先には何があるのでしょうか?

私は‘80年代から2010年代後半までで4社を経験しました。それぞれの会社の特性もありますが、段々時代の流れで合理化が進み、職場が荒んで行きました。

2010年代は、ついに正社員どころか協力会社の管理職まで自己完結型の人間ばかりの構成となり、

実際の作業は二次受け、三次受けの下請け業者に任せるようになりました。

ここまで分離されるとお手上げです。それまでの自分の経験から考えた現場の改善手法が全く通用しなくなったのです。その後慣れた業界を離れバリュー・チェーンの短い仕事を探しました。

以前の職場の何が楽しかったのか?

昔は当たり前に出来ていたことがいつの間にか出来なくなりました。今と比べて何が良かったのでしょうか?

・時間的余裕があった。今から見れば効率化の余地があるザルのプロセスかもしれませんが、一つひとつの作業がゆったりしていたと思います。

・忙しいときは残業もできた。残業を強要するマイナスの習慣もありましたが、自発的に残業することも可能でした。

・人との競争ではなく、自分への挑戦、自己の成長のために仕事に没頭できた。

・互いに協力しながら仕事を進めていく考えの人が多かった(決して全員ではなく自己中な人も一定の割合でいたが)

何が変わったのか?

時代の流れ、日本の人口分布など、様々な要因があります。再現不可能な要素が多いと諦めていました。

①日本全体が上り調子だった

②人口分布が’80年代後半まで理想的なピラミッド型で若手が活躍できた。(’90年代から中年層に人余りが始まる)

③バイタリティのある「団塊の世代」が長く牽引し、後継者を作らなかった。

④’90年代から始まり、特に2010年以降VUCAの時代に入り、それまでの戦略が通用しなくなった。

⑤非正規社員の増加、合理化の徹底、専門性を高めるために分業化、階層化

経験した理想の職場とは?

私が経験した会社はすべて大企業のオレンジ組織、ピラミッド組織です。身近に社長はおられず、課長や事業部長が自分の職場環境のトップでした。

そのため、現場の管理職(課長や主任)の優秀さや人間性(いかにサーバントリーダーシップを発揮しているか)に依存するかもしれませんが、具体的な職場の良さ、ティール組織的要素を書いてみます。

・経験した理想の職場(その1、 大手通信機器メーカー)

最初に入社した会社で多くのことを吸収しました(感謝しかありません)。時代背景が多分に影響していますが、良かった点は下記のとおりです。

>職場の同僚が協力し合っていた

所属した課は100人弱、その中の約20人のグループに配属されました。30代後半まで年齢層がバランス良く構成されていて、月1~2回の飲み会がありました。今から思えば、その飲み会の雰囲気が抜群に良かったのです。誰かが話しているときはみんな聞いて会話に参加する。私のような新人にもいろいろ話しかけてくれて会話に参加させてくれる気遣いを感じました。傾聴とコーチング、今思えば理想の先輩、同僚達でした。

>課長が部下を守ってくれていた

自分が担当したプロジェクトで、前工程が大幅に遅れため、顧客立ち合い試験当日の早朝に出社して準備に追われているときです。課長が出勤時偶然目にして「今頃何をやっている?」と言いながら手伝ってくれました。

入社して間もない自分には雲の上の人のような存在だった課長が手伝ってくれたことは嬉しく、その後のモチベーションも上がりました。

>個人のヤル気を認め応援してくれた

現場で起こる問題を解決していく行動を、少しずつ深堀りしていきました。私が積極的に動く行動が段々成果につながりだし、周囲からも認められ、プロジェクトリーダーとして指名されるようになりました。そもそも、この職場は半期ごとに次の仕事をみんなで自薦他薦で決める習慣がありました。

肩書でない、実力で現場の評価を得て、発言力を増していく。そんな仕事の楽しみ、喜びを感じられました。

>顧客を最優先する

自分が納得しなければ例え平社員でも出荷を止めて良い。それが課の方針であり、課長は他の部署からの攻撃の盾となってくれました。

>常識外れの人間は比較的少なかった

当然、自己中な人、協力的でない人、仕事で得たノウハウを隠す人、など一定比率いましたが、今から思えばマシでした。感覚的には6~7割はまともな人達でした。

 

・経験した理想の職場(その2、 超大手外資通信機器メーカー)

>アットホームな職場

アメリカ本社で1年過ごしたとき、勤続30年の人の誕生日パーティーがありました。みんな常識的で、誠実で自然体で生きていると感じました。

もっと頻繁に転職すると思っていたので意外で、聞いてみると、「普通はそうだけど、この会社はいい会社なので特別だ」と言ってました。

>人間的に素晴らしくオーラも凄い本部長

四半期ごとにイスラエル人の事業部長がプレゼンをされたのですが、いつも未来に夢を抱かせるワクワクする内容だったのを覚えています。製品市場の黎明期の数年だけに滞在し本国に帰国されましたが、人として震えるほどオーラーを感じさせる人でした。

>挑戦者を尊敬するフロンティア精神を持っている

アメリカ本社に1年滞在時、最初の2か月間配属先が決まらず、いろんな部署を転々としました。行く先々で事情を説明するとみんないろいろと手伝ってくれました。自分の考えをはっきり言い、積極的に動く人に対して協力する風土のようなものを感じました。

>社内コンプライアンス意識が高い

アメリカ本社には敷地内に大学もあり、各部門の専門性の高さ、顧客に対する誠実さ、社内コンプライアンスの高さは尊敬すべきものがありました。どうも日本をはじめアジア系企業は合理性を最優先にするあまり、この点がおろそかになりがちです。

 

共通するのは居心地の良さ

過去の居心地の良かった職場を思い出してみると、下記のような要素があり、やはり人間関係が一番影響してきます。

・人が協力し合う雰囲気があった

・人として尊敬できる、良い上司、リーダーがいた

・互いを尊重し合う風土があった

・基礎的なコミュニケーションが出来る社員がある程度、周囲にいた

・何より職場にいることが楽しかった

最初の会社で学んだコミュニケーション方法を活用して、2010年以降に問題があった2次請け、3次請け会社を懸命に改善しようとしても、どんどん荒廃していく職場環境において、砂浜に作った砂城が波で流されていくような感覚がして疲れるばかりでした。

後にオレンジ組織という概念を学び明確に分かったのですが、このような状況で草の根的に「献身的に周囲に尽くすサーバントリーダーシップの概念を持った人材を育てること」は不可能です。

 

ティール組織を学び、再び現状を眺めてみる

ティール組織を学び、過去の会社での経験を思い起こしてみると、無知ゆえに無駄な努力をしていた部分が多々あります。

また、考え方は正しかったのに、自信がなかった、もしくは的確な方法でなかったために効果が不十分だったところもあります。ただ、全体的に自分の考えは間違ってなかったと思う部分もあります。

そこで最近考えているのは、あくまでオレンジ組織の慣行「感情は無視し合理性で判断する」「利益最優先」の方針に触れずに、ティール組織の知識のみ浸透させる方法です。そこにいる社員の判断に委ねるのです。

社員全員がレッド、アンバー、オレンジ、グリーン、ティール組織という価値観を学ぶだけでも意味があります。的確に違いを知ることで自分の考えに応じた適切な応用ができます。

ティール組織が、組織構造の効果により「社員を育成する」「モチベーションを上げる」ことが出来ることを学び、それに相当する工夫をオレンジ組織でも行えばいいのです。

そして、大企業故の問題「社長や経営陣は雲の上の人」、つまり社長や経営陣は全く関与せず、理解を示してくれなくても、人事部研修部門や情報管理部門、営業部門と連係して、オレンジ組織内で改善は出来ます。

例えば、

「顧客ごとのシンプルなバリュー・チェーン」、「現場を顧客と捉えた協力的な間接部門」、「課長、係長の肩書は残したままで、フラットなチーム構成」、「競争相手は同僚でなく自分自身と捉えられる情意評価を含めた人事評価制度」等。

ティール組織を学習すれば、波で流される砂城のような無駄なことは一切しなくても、前に進めます。

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