中間管理職が組織改革をしようとするとき #3

テーマ「中間管理職の有志が集まって組織改革を草の根的に行うにはどうすればいいか」の#3になります。

その3:少ない抵抗で改革を進める方法

前回の#2の例はとびきり優秀な社長だからこそ出来たことと思いますが、執筆された書籍でそのノウハウをすべて公開されているので、本質を感じ取りながら実践していくことで近い成果は出せると思います。

経営トップの方が活動を開始されるのなら基本的に問題ないのですが、トップ以外の方が組織を良くしようとする場合は「組織の意識はそのリーダーの意識レベルを超えられない」という基本法則を忘れることなく、ティール組織への変容は最初から諦め、ピラミッド型競争社会であるオレンジ組織のままで少しでも住みよい環境を目指すしかありません。

ティール組織を支持する役員や事業部長クラスの方が、経営トップに具体的な事例を示し説得をしても効果は全くありません。私も昔何度も実績を示した上で説得しようとしましたが、信じられないことに見えているものが全く違うのです。まさしく「ティールのレンズ」で眺めることが出来ていないのでしょう。細かく分解して分かりやすく説明しようとしましたが、それもダメでした。これはもう直観に近いのです。多くの情報に触れ、分析的なアプローチをしても、最後は感情的な直観で判断する領域。それが違うのならどうしようもないのです。仲間を募り自分の価値観を強要しようとすると「あいつは周囲を洗脳しようとしている」と煙たがられたり、倫理観に欠けたオレンジ組織特有の狡猾なマネージャにアイデアの良いところを利用されるだけです。最初から以上のことを覚悟して進めていきましょう。

オレンジ組織の中にティールの施策を潜り込ませる

オレンジ組織のリーダーや管理職から拒否されにくい一番無難な改善方法は、表面上はテーマを絞った限定的な改善施策を複数実行することです。それぞれは直接関わりはないが、ティールのレンズをもった仲間から見れば、互いに関連し合い、より進化したオレンジ組織へ導くことを目指していることが理解できます。

例えば、下記のようなものです。

・価値観や行動指針を確認しながら成果を出していく「新しい会議方法」の提案

・現場で細かな規則や方針を作らなくても自ら判断して行動できるしくみつくり

・予算編成プロセスを簡略化しスピードアップを図る

・プロセスを複雑化している部署(規則や方針遵守を取り締まる部署等)の廃止

ティール組織への理解があれば、どこを目指しているのかは一目瞭然です。

経営トップを説得し、こういった活動が途中で早急な成果を求められることのないよう、例えば5年間は継続させてもらえる了解を得る必要があります。オレンジのレンズしか持たない経営トップにも理解できる「成果」を30%程度出すようにして、残りはティール組織のエッセンスを潜り込ませていきましょう。オレンジのレンズで見たら「もっと効率良く出来るだろう」「もっと細かなルールや手順書を作ったり、監査を徹底すればいい」と言ってくる部分に目をつぶってもらうように説得しましょう。「それは現場の人の気持を大切にしたいから」と理由を言っても理解されないのですから。

クレドを作り、年々完成度を高めていく

クレド(=企業活動の拠り所となる信条、価値観や行動規範、経営指針を簡潔に表現した文言)は、最初にたたき台を作り、日々社員で論議を重ね完成度を上げていくものです。絵に描いた餅でなく、実践に使えるよう、最初はコンピテンシーや具体事例を記録し共有していく必要があります。

ここで問題になるのは、売り上げが落ちた緊急時には、オレンジ組織特有の競争社会や効率化が優先され、社員の満足度や幸せは二の次にされてしまうことです。そうなると、それまでコツコツ頑張ってきたことが無駄になってしまいます。

それを防ぐためにも、クレドの定着を急ぎ、ティールのレンズを持った人で改革事務局を作り、ティール的KFS(=重要成功要因)を見極め、短期間で基盤を作ってしまう方法もあります。

この場合は、メンバーでティールの勉強をすることで学習が進み、周囲から浮かないようにすることも大切です。今まで周囲の価値観と合わず常に違和感を感じて生きてきた人がティールの価値観と出会い、やはり自分が正しかったと分かったときは本当に嬉しいものです。しかし、いくら周囲を説得しようとしても無理なので常にオレンジのレンズで見える景色を想像しながら進めていきましょう。

また、クレドの中に社会人として必要なこと、挨拶をするとかパワハラやセクハラしない等を明記していき、具体的にとるべき行動を確認していきましょう。

評価基準と評価方法の改善

クレドと並行して進めて行かないといけないのが、評価基準と評価方法です。一般社員だけでなく、役員も同様に見直します。

何度も見直し、数年かけて完成させていく気持ちでクレドや役職のコンピテンシーなども見直していきます。仕事が出来るが倫理的に問題がある人には、本人に伝え修正してもらいましょう。

この部分でも、経営トップの考えや評価にずれがあれば矛盾が生じます。倫理的に問題があるが短期成果を出す社員なので昇進されよう、とか、ごねられて仕事が滞れば大変なので機嫌を取っておこう、といったことがあると、社員のモチベーションは最低になります。

権限委譲とコミュニケーションの改善

権限の委譲に対する考え方がティール組織とオレンジ組織では大きく違います。オレンジ組織では、上司と部下の役割が違っていて、オレンジのレンズで見た理想の形は、上司は緊急でない重要な仕事に集中し、部下はあまり重要でないが緊急な仕事をしたり上司から指示された仕事をします。ただ、現実には多くの上司は目先の問題対応に追われ常に忙しいふりをして、たまに暇な夜は慌てて帰宅する状況なので、部下の不満は溜まる一方です。

優秀な若手があまり出来ない上司の下に配属されたらさらにやりにくい状況になります。オレンジ組織では基本的に競争社会なので、互いの長所を認めたり協力し合う関係を築くのは本音では無理があります。お互いが遠慮し合いストレスを感じながら当たり障りなく付き合っていくのか、もしくは極力関わらず個々人の仕事に集中するのか、どちらかになります。決して積極的に意見を交換し、ぶつかり合いながらも互いに成長していくことはありません。

経営トップが主導権を持っていない改革では、この部分がネックとなります。既存のオレンジ組織のまま改革を進めていく場合は、一旦は経営トップの強いリーダーシップで同じ方向を向かせ、詳細を中間管理職に任せるやり方が無難かと思われます。

少しずつ、上司の役割は部下のサポートのみにし、人事評価はクレドを元にした詳細な評価シートなどで本人が納得できるものに改善していきます。

また、部署を細かく分けず大人数の大部屋的な職場環境にすることで現場のコミュニケーションを改善していきます。

社員を管理、監視する行為や部署は減らす

ほんの一握りの不正を防ぐために、多くの善良な社員が面倒な手続きを強いられ、仕事の効率は落ち細かな対応を行えずにいます。

不正を探すのではなく、個々人が不正をしないように日頃から教育を行う、クレドを浸透させる、倫理観の欠けた社員を排除する、という対応をしないといけません。普段の行為に対して甘く放置状態で、監査部門だけが極端に厳しく監視することに大きな矛盾を感じます。

交通違反を未然に防ぐように見やすい標識に交換するのではなく、標識が見にくく違反しやすいところで警官が隠れて取り締まることに似ている気がします。

まとめ

中間管理職の有志が集まって組織改革を草の根的に行うにはどうすればいいか、を考えれば考えるほど、むなしさが付きまといます。

10数年前に、あるプロセスデザインのコンサル会社が、企業の草の根活動をしている社員の交流の場を提供してくれていて参加させて頂いていたのですが、いろいろな企業から集まった活動グループの何社かは経営トップから非公認の活動で、孤立しているところもありました。結局その交流の場はその後半年ぐらいで終わり、次回から経営トップ公認の管理職グループのみが参加できることになったようです。そのコンサル会社のアプローチは正しいのですが、草の根の活動家はどこにいったのか気になるところです。

ティールのレンズを持った経営トップの方の大半は、すでにご自身で納得のいく組織環境を作っておられます。問題は、オレンジの価値観を持つ経営トップの方が、一般社員の覇気を上げたりもっと成果を出したいと社員の意識改革を行う場合です。上からの命令が順に下に降りてきて課長クラスに実務が回ってくる場合があります。その場合でも、部長の協力を得て何とか理解ある役員、事業部長まで説得出来れば、何とか第一歩は踏み出せると思います。その手順を今後も書いていきたいと思います。

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