小さな会社をティール組織にする場合 #1

「小さな会社」の定義を「同じ組織内で長期的に働いている社員が50人ぐらい」とします。このくらいの規模なら社長が社員全員のことを把握できるからです。もっと規模が大きくなった場合は、信頼できる社員に任せる必要があり、そこで自分が望むのと違う方向に進んでしまう懸念があるからです。そういう場合は、組織として分けられるのなら分けて小さな組織で試行運用します。

何か全く新しいことを始めるときは、社長自らが仕切っていく必要があります。細かな部分までやって見せて、一緒に考えて、その空気感を伝えていきます。

やることは大きく分けると、次の3つです。

①「緊急でないが重要な仕事」を日常に取り入れる

②甘やかさず、委縮させず、自由にのびのび挑戦し失敗できる環境

③話し合いのスキルを上げる

①「緊急でないが重要な仕事」を日常に取り入れる

いつも「忙しい、忙しい」と言っている仕事のあまり出来ない管理職が非常に多く、それが組織で自分を守る処世術と勘違いしている。「忙しい」と口に出して言わなくても、目の前の仕事に一心不乱にやっているふりをしているふりをしている人も同類です。本人は真剣にやっているつもりでも、もっと前段階で煙の出る前から対応しておけば問題なかったのに、火が出てから慌てて対応しているのは怠慢としか思えない。

「出来る社員」がやる気を削がれる原因の大半は、そんな忙しいふりだけ上手い管理職のしりぬぐいをさせられることにあります。出来る社員は煙の出る前から未然に防いで仕事を減らしています。それを正しく評価できない管理職は「手が空いたら次はこれやって」と言ってほったらかしていた問題の火消しを命じます。

問題が発生してお客様が激怒し、責任者は大慌てで再発防止策とかを部下にまとめさせお客様に謝罪します。その内容は、本質的な改善でなく、急場しのぎのパッチ的対応が多いのです。確認項目が増えただけの現場に負荷のかかる対応です。

これは現場の問題です。でも社長は、この問題の根底にある膿を出さないと前に進めないのです。

どうすれば、膿を出せるのか?

それは、社員の声を聴くことです。本当にやる気があり、組織を良くしようと思っている社員はいます。彼らの声を聴き、少しずつ変えていくしかありません。

事業部長や部課長が悪いわけでもありません。彼らは彼らなりに自分の身を守る処世術として身に着けてきた方法で対応しているだけなのです。目の前の問題をうまく払いのけて他人に押し付けることを今までその組織で学んできたのです。

次に説明する2つの項目とセットで改善していかないと、この部分だけを改善することはできません。いきなり社員を集めて「目先の対応だけでなく、根本的な問題を普段からコツコツ改善していく仕事のスタイルにしましょう」とスローガンとして掲げても何も変わりません。

社長自らが一歩一歩進めていき、見本を示さないといけないのです。

②甘やかさず、委縮させず、自由にのびのび挑戦し失敗できる環境

個人的に細かな部分を注意しない、指摘しない、指導しない、でも見守る。このさじ加減が難しいですが、辛抱強く方針をころころ変えず続けるしかありません。

それぞれの社員の仕事ぶりが互いに見えるような組織形態にし、オフィスの仕切りもなくし大部屋にします。全社員で集まって仕事の進捗状況を共有できる会議をし、最初は社長自ら仕切り望む雰囲気、空気感を示します。

優秀な社員を誉めて手本を見せ、どんなときにどんな行動をとるべきかを日々示していきます。新しいことに挑戦し、失敗する姿、成功する姿を見せます。職場の出来事や会議は社員にとっての貴重なOJTです。先輩や同僚がどんな時にどんなことをして褒められた、叱られた、という現場の出来事から、「自分だったらこうやる」という考えが浮かんできます。そして実演します。その繰り返しで人は成長していきます。

社員の失敗を許容できる環境をつくるには、①で説明した「緊急でないが重要な仕事」を日常に取り入れ、「緊急で重要な仕事」を大幅に減らしておくことが必要になります。「緊急で重要な仕事」は出来る社員にやらせ、あまり出来ない社員はそのサポートに徹しないと回らなくなるからです。

①と②の環境が揃えば、その職場の空気感は居心地よく感じられます。それはその空気感を経験したものでないと分からないものです。私が最初に過ごした組織はそんな環境でした。その9年間の経験は一生の宝となりました。私の価値観がそこで形成されたからです。

③話し合いのスキルを上げる

①と②の環境を整えるのは、優れたリーダー1人の力でも実現可能です。しかし、次のステップに進むときには、社員全員のビジネスリテラシーをある程度引き上げる必要があります。

一番大きなスキルは「話し合いのスキル」です。目的に応じて会議の進行やスタイルを変化させる、などのファシリテーターのスキルも必要になります。人の話を聴く、互いを尊重する、意見を遮らない等の参加者1人ひとりの心の在り方、スキルも必要です。

また、目的に応じて、たまには脱線してもいいので気になることを思うままに吐き出す話し合いを行うことも効果的です。ホールシステムアプローチの手法も使えます。

それだけでなく、普段から上司部下の付き合い方をより平等にし、誰に対しても「~さん」付けにして、「~くん」「~課長」とかの呼び方をやめる。そもそも、「同じ意見を言っても、肩書が上の人の意見なら聞く」といった表面的なコミュニケーションの取り方を改善していくことが大切です。

これに関しては、別記事の参考事例で書いた行動指針、クレドを会議の前に唱和することは効果的と思います。

まとめ

小さな会社(組織)を改善するには、現在進行形の業務をテーマにOJTしながら、3つの要素をすべて同時に改善していくことが一番無理のない方法です。

「絵にかいた餅」的理想の姿など必要なりません。明日良くなるようにするのではなく、今目の前に起こっていることを改善していくのです。

その中で、信用できる人材を見つけていきます。「協力的」+「表面上でなく心底同意している」+「仕事が出来る」+「Giver(他人の為に動ける)」の4つの要素を兼ね備えている人材は選ばれた管理職の中から探しても1~2%しかいません。

「協力的」+「表面上でなく心底同意している」+「Giver(他人の為に動ける)」の3つの要素の人材は10~20%までいくので、時間をかけて彼らを育成していくのです。

時間の経過と共に「非協力的」+「本当はやる気があるが諦めている」+「Giver(他人の為に動ける)」の人達が急に協力してくるタイミングが来ます。

ブレずに継続すること。諦めずに続ければ、必ず成功します。

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