大企業で病んだ組織環境にティール組織を導入出来ないか、いろいろ考えてみました。
結論から言うと、社長が心底願って推進し、役員も同意する環境が整ったとしても管理職が大半は入れ替えることになるので、実現は「不可能」に近いでのではないかと思います。
大企業は中途半端な社員研修(部課長クラスに責任を転嫁したリーダー研修等)とかやらずに「仮面を被り軍隊的指揮命令系統を整える的しくみつくり」をして売り上げを伸ばしましょう。
事業部のピラミッド組織はオーナーが不在
大企業の場合、事実上事業部が1つのピラミッド組織であり、そこのトップは事業部長です。その事業部長が全く役に立たないのです。懸命に体裁だけ維持するので内情はどんどん腐っていきます。でも、トップである事業部長だけが悪いわけではなく、どこにもオーナーが存在しない組織自体に問題があるのです。
会社全体の戦略は社長や役員が仕切る経営会議で決まります。事業部長が自由に采配を振るえるのは、自分の事業部の目先の売上目標を達成するための具体的施策に関することだけです。「経営者目線で考えろ」と事業部長は部下によく言いますが、実は自分が経営会議で散々言われて憤っているからです。
新しいことに挑戦することも許されない、実質的な権限がない事業部長は、たとえ役員と兼務する立場だとしても、経営会議では末席で上席の役員の顔色をうかがって出世競争を生き残ろうとしています。経営者らしい采配は何一つ振るえるわけないですね。
組織は階層化され、役割は分断される
組織が大きくなるほど階層化し、無駄に各部が専門化され、無駄に高機能化され、各自のプライドだけが高くなり、役割が分断され各自がバラバラに動き、俯瞰的な目線で見ることが出来ませんし、見ようとする人もいません。自分の部署がすべてなのです。
組織の立て直しができるという点では、経営が苦しい方が抜本的なアクションが取れてまだマシかもしれません。なまじ売上が良いと、現状は維持しつつ、さらに上を目指してアクションを取らないといけないので、上手くいっているしくみを大きくいじれない辛さがあります。
どちらにせよ、事業部内部は一部の社員に頼り切った状態で無理やり回しているので、下手に混乱を招くことをすると崩壊しやすい環境です。部課長の考えを1つにまとめるのも難しいので、事業部長としての自分の意見をはっきり言うことは厳禁です。
会社全体の意向という形で背景を話し、人材不足でリーダー研修が必要とか言って、部下が原因という方向に話題を向けたがります。
人の育成は人事の研修部門が担当し、社内インフラやコミュニケーション改善のためのtoolは社内の情報システム部門が担当というように分担が分かれています。つまり、責任を分散し、今の組織の問題は誰のせいでもないという流れに持ち込みたいのです。
現場の一般社員も感情を殺し、仮面を被り出す
その無責任なやり取りの結果、現場のニーズに合わなかったり、無駄に時間がかかったりして現場はどんどんしんどくなり、どうでも良くなり、現場で閃いたアイデアを活かそうとしなくなります。
課長は一般社員を使うことに疲れ、一般社員は社長→事業部長→部長→課長と降りてきた問題を何とか力ずくでごまかし、非正規社員や外注に振り、完了させます。
「目先の納期は死守せよ」、「今のうちに次の打ち手を考えろ」と相反する注文を突き付けられて、しわ寄せは一般社員に来るだけです。
一般社員は、人間不信となり管理職を信じなくなり、本音でしゃべりません。陰で悪口を言うが表向きは適当に調子を合わせて日々の仕事をやり過ごしています。
こんな日常を乗り切るには、社員全員が仮面を被るしかないのです。そんな心境で前向きなアイデアが生まれる訳がありません。
役に立たないリーダー研修
でも、事業部長や部長も本当に苦しい状況です。一般社員のことをいちいち心配していたら自己の精神が崩壊しそうで、彼らも「仮面」を被ります。
そして、上からの命令を下に指示するだけです。事業部内の問題は全社的な問題としてとらえ、事業部固有の問題は、部下の力不足と捉え、研修部門にリーダー人材の育成を依頼します。
研修部門は、研修室で行うリーダー人材育成の研修を企画します。職場の問題解決に応用できるスキルを学ぶ研修だとしても、あくまで現場と乖離した環境で学びます。職場に持ち帰り、どこまで応用できるのでしょうか?
そもそも、自分が現場を改善してやるぞという気力がないとできません。一般社員にまずそんな気概はありません。事業部長も部長も投げている問題を、なぜ自分が解決しないといけないのか?誰がオーナーなのか?みんな当事者意識を持っていないのです。
こんな組織に解決策はあるのか?
ではどうすればいいのでしょうか?Z世代に入れ替わる2040年以降まで待つしかないのでしょうか?少なくとも、こんな状況のオレンジ組織にティール組織を導入することは無理です。オレンジ組織のままで、水平的に職場環境を良くするのも難しい状況です。
俯瞰的な目線で会社を見て、そこに働く社員の精神的健康面を心配する人がいない状況では、繊細な心を持った人はどんどん辞めていくのかもしれません。
どうすれば、いいのか?いろいろ考えたのですが、一番確実な方法は、そんな環境の悪い職場は多少給料が良くても辞めるのが最善の策です。
それでは話が進まないので、オーナーシップを持った事業部長がもし存在したら?という前提で考えてみます。
最初にやるべきことは、事業部内の階層化を改善し、出来るだけシンプルにすることです。他部署に影響を及ぼさない範囲で、実質的な改善から試してみます。そして、事業部長が様々な問題をしっかり見据え(今までのように見て見ぬふりをやめて)、部下の部課長達としっかり話し合いをして、社長や役員に断りを入れてから、出来ることを少しずつ解決していくことです。
その次に、事業部内の一般社員全員を集め、意見交換します。組織によっては、部課長達との話し合いと同時にやっても問題ありません。しっかり話し合うことです。
今の大企業病を直すには、自己完結型の優秀な仕事のできるリーダーを量産することではありません。もし、そんな幹部を量産すると、その周りに自発的に動かないイエスマンの雑用係を多数配置する必要があり、そんなバラバラの派閥が多数出来るだけでイマイチ成果が上がらない組織が出来ます。
事業部長がオーナーシップを持って、部下を仕切る。オレンジ組織の水平移動的改善というよりも、レッド組織化かもしれません。オーナーシップを持った事業部長を演じる器の幹部がいなかったら、部課長クラスでこじんまりとしたチームが複数入る組織をたくさん作ることです。
出来るだけシンプルに、フラットにして、今から「動きながら考える」がキモです。
また、ティール組織にしなくても、ティールの価値観を一般社員が学ぶことは、事業部長や部長たちには視えないものが視えるようになる、感じられないものが感じられるようになる、という点で大切なスキルになります。
まとめ
あまりまとめになってないですが、大企業病の病み具合が酷い。誰が悪いわけではないですね。今の事業部長はあまりにもキツイ仕事すぎますね。
「経営者目線」っていったい何なんでしょうか?なんで会長や社長に経営会議で自分のことは差し置いて、散々言われるのでしょうか?
私も昔、経営会議に出席し、開発者のレビューで役員連中からぼろくそ言われるのを聞いていたのですが、古臭い過去の経験からアドバイスされても役に立たないことを言われてもひたすら耐えていた若手エンジニアがかわいそうでした。
「事業部長がオーナーとなりレッド組織を目指す」、「階層化、分断を改め、出来るだけ現場で判断する」が大切です。
そして、「改善のための3年計画」とかやめましょう。今すぐ出来ることから始めましょう。組織の全員の知恵を持ち寄れば、今すぐ出来ることはあります。
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