中間管理職が組織改革をしようとするとき #1

中間管理職の有志が集まって組織改革を草の根的に行うことはやめた方がいいでしょう。たとえ事業部長や役員が好意的に協力してくれても、途中で挫折したり掌返したように反乱分子にみられる可能性が大きいからです。ただ、やり方次第で外圧に負けずに少しずつ足元を固めていくことはできます。社長や役員が分かる成果を出しながら、根本的な改善を盛り込んでいくのです。繊細で地道な作用ですが、活動を広げていく方法を順に説明していきます。

その1:失敗事例 (保守派役員と腹を割って話せない)

その2:日本的ティール組織の成功例

その3:少ない抵抗で改革を進める方法

まずは、その1:失敗事例です。

その1:失敗事例(保守派役員と腹を割って話せない)

私がある役員(兼事業部長)に依頼されて複数の事業部の改革を同時に行ったときは、各事業部長たちは非常に協力的でした。商品企画/製品開発のスピードを上げるために顧客ごとに営業、SE、開発部門を1つのチームにまとめると共に、事業部の主要メンバーが集まり事業戦略から自分達の活動計画まで落とし込むミーティングを開催し、参加者はワクワクしながら会議で活発に意見を言い合い話し合いを続けました。

困ったのはここからです。試行錯誤をしながらみんな頑張っているのですが、伸び悩んできたのです。少し急ぎすぎて頭で理解しても体がついていけてない状態でした。成果を出す期限が迫ってきており、リーダーである事業部長がペースを落としたくなかったのです。暗中模索の中で参加者すら不安な中、遠目で観ていた保守派役員会メンバーが苛立ち始めました。推進派だった社長も心配になり「早く見える成果を出してくれ。」と言い出しました。

このままではまずい。私は事業部長たちを集め、一旦事業部長が仕切るという元のスタイルに戻しつつ、保守派役員たちと腹を割って話し合うよう頼みました。

もともと組織改革の施策は下記のように3本の柱がありました。

①事業戦略の作成(現状は、営業、SE、開発でバラバラに行動)

②人事評価の見直し、コンピテンシーの作成(現状は、プロマネが重労働すぎて誰もやりたがらず、若手は指示待ちエンジニアを希望)

③スタッフ組織の改革(融通が利かない、対応が遅い、役に立たない、情報共有できない)

理想は顧客ごとに組んだ少数精鋭チームですべてを仕切れるようにすることでしたが、現状は無駄に手間ばかりかかるプロセスが多すぎ誰もやりたがらず、人材が育たない状況でした。ただ経営会議では施策の①しか理解されておらず、②と③に対してはなぜか無視されている状況でした。問題認識はされていても具体的解決策を議論できないのです。

「経営会議で話すべき議題ではない」→「取るに足らない問題」→「価値観の違いで問題認識できない」そう想像し、まずは彼らが見ることができる成果を出してから議論しようと進めてきたのでした。

事業戦略等の活動計画に沿って一旦トップダウンで軍隊的に動き各自の基礎力を高めてからまた自由な活動を再開する案、別に理想の新組織を作り実験的運用を行う案、等を考えていたのです。

このすべての計画を話し、現状は部課長達が試行錯誤して学んでいる状態で一過性のものだと説明してください、と話したのですが、事業部長はもう少し頑張って見える成果を出したいと言われ、ズルズルと長引いた結果この活動は中止となり、保守派常務が引き継ぐことになりました。

常務は、それまで依頼していた複数のコンサルを一新し、日本最大手の保守的コンサル会社に依頼し、若手開発エンジニアの実践的なディスカッションを指導する研修を始めました。実務の改革には一切触れず、研修による成果目標も定義しないと言い切り、昔からの良さである「個人の自由」「自由競争」を伸ばして行きたいと言われていました。組織のしくみに問題認識はなく、個人の力が落ちてきたとの理解でした。

その会社の良さである自由な風土が原因で、情報の共有やコミュニケーション力が劣る点がネックとなっていることを活動初期の話し合いで確認し合ったはずですが、常務には納得が行かなかったようです。数人のスーパーマンが会社を引っ張っていった成功体験があり、その人達が個人の功績で40代で役員に昇進していった歴史を再現したかったのです。

今は、一部のスーパーマンを黙々と支えた縁の下の力持ち的社員達はリストラで去っていて、地道な仕事が出来る人が少なくなっている現状をご存じなかったのか。

まとめ

社長合意で定期的に経営会議で説明しているにも関わらず、総論賛成各論反対で空中分解する可能性は常に付きまといます。最初に賛成してもらっても、途中で少しでもマイナス要素が見えれば悪気なくても結果的に潰されます。

どうしてこんな簡単な道理が理解できないのか?と不思議になりますが、価値観が違うと本当に全く通じないのです。絶対に説得できないのです。本音で話し合うことが出来れば、お互いの間に埋まらない溝があることが分かります。

今回の事例のように、事業部長(兼役員)は100%活動の推進派だったのですが、まともにぶつかるような行動で活動を潰してしまいました。その原因は、最終ゴールに自信がなく、迷いや悩みを共有したかったのかもしれません。その甘さを百戦錬磨の経営陣に見透かされたのです。

この事例からの教訓は、「相手の価値観を変えることは無理なので、表面上は彼らが好む形に妥協し進めていく」ことです。

また、常務はすべての問題を考慮して施策を打ったわけではないこともヒントになります。乗務の打った施策は尊重しつつ、共存できる改革を進めていけばいいのです。

コメント